第3話〜悲しい広告

暑い時はウナギ。

ご馳走になりました!美味しかった。

どんなに貧困に陥っていても、食べ物運はあるんですよね。

食べ物もらい運、食べ物ゴチ運、食べ物巡り運。ありがたい。

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では第3話どうぞ。

 

 

ひびきは学校にいた。
先生から不採用を聞かされた。
 
「やっぱりダメだったかー」
暗い顔をして教室に帰ると一番の仲良しの友人 小石ユリノが寄って来た。
 
「どうだった?」
「不採用だってさ、世の中は働き手がいないって言ってるのに こんなに意欲のある女の子をどうして不採用にするかなあ」
「そうだったか…ほんと、わかってないなあ。
ビッキーは顔も性格もイマイチだけど 意欲はあるもんね」
 「コレ、ユリノお口が過ぎますよ!」
「さーせん」
「今日、やけ食いしたいんだけど、どうすか?」
「マジか、今日はバイトがあるんだよねー」
「そうでした、すまんすまん。太るし、やっぱやめるわ」
「ごめんね」

学校からの帰り道、グランドでサッカーをしている友人をみつめるひびき。
「部活でもしてたら 採用されてたかもな」
ちょっと暗い顔で歩いて通り過ぎた。

ひびきは高校入学後、どうしてもバイトがしたくて部活には入らなかった。
ファミレスで2年ほどバイトをしたが、時給が上がらず店長にそのことを訴えるとギクシャクしてしまい やめてしまった。
しかし、レストランで働くことは嫌ではなかった。
就職するならサービス業だと決めていた。

帰りの電車の中で中吊りの広告が目に入った。
「美しい島とやさしい温泉で 自分のことを考えませんか?」
と、書いてある。
旅行会社のツアーの広告だった。
「自分のことをかんがえる?自分の事を考えない人っているんだろうか?」
そこには夕日が照らす海に どっしり構える大きな鳥居があった。
「超きれい」
ひびきは、本当は悲しかった。
あのホテルで働きたかったのだ。
自分がホテルでお客様と接している姿を何度も想像した。
制服を着て、客に丁寧に接し、颯爽と動く自分の姿を描いてはにやけていたのだ。
まわりが進路を決めていく中で、自分はホテルで働くと自慢げに語る姿も想像の中にあった。
広告を見ながら涙がこぼれた。

「私だってきれいな景色を見ながら温泉に入って、自分のことを考えたいんだよ」
電車は駅に到着した。
ひびきはさっさと電車を降りて駆け足で帰った。
泣いている姿を見られないように。


第4話につづく

 

あけの島、しおの宿 第2話~残念をだきしめて

海の景色はいいもんですなあ。

チープな旅に出かけました。

海を見ながら車の中で友人とハモる。これが意外に気持ちいいのだ。

この物語のタイトル決めました。「あけの島、しおの宿」

ドラマになることを想定してのタイトル決め。いいんじゃない?

さあ第2話をどうぞ。 

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ひびきの叔母深町栄子はひびきの母の妹。

父と母はひびきが幼いころから共働きなので 「いまだに独身(ひとり)」の叔母が

ひびきの面倒をみてきた。

35歳でスーパーの販売員。特に美人というわけでなく、

特にかっこいいというわけでなく、やっぱり惜しい。

趣味は食べ歩き、ワイドショーチェック、最近お花を習い始めたばかり。

彼氏無し。

 

「不採用?どして?心当たりある?」

栄子がラインの返信をした。

「また、泊まりに来てくださいって言われた。」

ひびきが返した。

「まあ帰ってから話すわ」

そこで、携帯を閉じ家に向かった。

 

ひびきの家は1丁目 栄子のアパートは2丁目だった。

ひびきはまっすぐ家に帰らず、栄子のアパートに向かった。

この日栄子は休みで家にいた。

恒例の録画したドラマを一気に見る日だった。

そろそろひびきが来る頃だと思ったのか、

区切りのいいところで止めてリモコンを置き、電気をつけた。

 

「はいはい、ダライラマー(ただいま)」

「おお、おかえり、お疲れさん」

栄子はひびきを迎えた。

「何見てたの?」

手を洗いながらテレビを見た。

「『夜を抱きしめて』の最終回」

「わお~、そうだったっけ?、ずっとみてないわ」

「ちゃんと録画してるよん」

「わ~い助かったあ。あとから見せて~ドロドロ?」

「まあ、かなりね。でも意外にあの男が真面目になるんだよね?」

「え~?あの3マタ男が?」

「そう、だんだんカッコよくなってくるんだよ~、って、

それはいいからさ、面接のこと」

「ですよね~。だからさ、もう二度と会いませんよ的な見送り方されたんだよ。」

「それはどうしてわかる?」

「あなた、ホテルに泊まったの初めて?って聞かれてさ、それって良くないの?

貧乏丸出しって感じなの?」

「そんなことないでしょ、私だって大人になるまでホテルなんか泊まったことなかったもん。貧乏でわるかったな?」

「このホテルのサービスが気に入ったって言ったんだよ。ここに泊まった時、

誕生日のケーキを出してもらったって。」

「え~~~~?それ言ったの?」

「なんかまずかった?私はそれが決定打だと思って言ったんだけど?」

栄子はしばらく困った顔をして言った。

「誕生日のケーキさ、あれ、私がお願いしたんだよね。姪が誕生日だからって。…ごめん。内緒にしておいたのが悪かったね。」

「うを~~~~~!そうだったんだ。…いやいや栄子ちゃんのせいじゃないんだから。私が勝手にそう思い込んで言ったことだから。」

「ホテルのチラシに、誕生日のサプライズケーキ承りますって書いてあって。。。。」

お互いの間に沈黙の時間が流れた。

(ひびき、ごめん。本当は最近いい感じだった酒屋のクラ君の誕生日をお祝いしようとホテルをとっていたんだけど、クラ君前日にドタキャンしやがって、暇そうなひびきを誘ったんだよね。たまたまクラ君とひびきが同じ誕生日で、チョコプレートの名前を急きょ変えてもらったんだよ。なんて、いえね~よ。いえるわけね~よ。)

「栄子ちゃん、ありがと。私のために。」

「いや、何と言っていいのか…」

ひびきはにこっと笑って

「また、就職活動がんばろ!まずはそのためにドラマを見てリセットだ、『夜を抱きしめて』8話目からみるよ~」

「8話からが激しいんだよ。あの男が車で追いかける途中に…」

「ノノノ 言うな言うな さあ見ますよ~」

 

電気を消して、お菓子とジュースを用意してドラマ鑑賞が始まった。

 

第3話につづく

 

 

ナントナックス、ブログはじめる

私、ナントナックス、ブログを始めます。

私が書いた小説がいつか朝ドラになることを夢見ています。

今回は朝ドラに今までなかった「ファンタジー」を取り入れた物語。

「〜〜なことあるかい!」

と、言われて結構!

気ままに書きます。

 

これからの物語はフィクションであり、実在する人物、会社名、地名とは何にも全然関係ありません。

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今日は特に暑い。6月といえども真夏のようだ。リクルートスーツに身を包み履きなれない靴をはいて ホテルの玄関に到着した女の子。

女の子といえども18歳。ショートカット、前髪は横に流してピンで留め、凛々しいまゆげと赤い頰、かわいい…ではない、でも、ブサイク…ではない、この子に合った言葉は「おしい」…がぴったり。

この春から高校3年生。山手ひびき。

田舎でもなく都会でもない中途半端な場所で生まれ育ち、勉強は苦手、部活の書道部もあまり行かず、友達は少しいるけど、人気者でもなく。いよいよ就活を意識し始めたとき、都会に出たいという気持ちが高まった。

求人票に、去年叔母と泊まったホテルの名前があった。

「ここ、よくね?きれいだったし、ケーキ美味しかったし、なんといっても都会だし」

 

電車を乗り継いで1時間。やっと到着した。

街のホテルは駅の近くにあり 多くの人が行き交っていた。

 フロント係の年配の男性に声をかける。

「山手ひびき、です。今日面接をお願いしています。」

フロントの男性はニコッと笑い、優しく言った。

「はい、伺っております。右手の喫茶へご案内します。」

(喫茶?カフェじゃないんかい?)

「ありがとうございます!」

いつもは出さないような明るい声をだし、緊張感を全体に出してついていった。

喫茶には、50代くらいのスーツ姿の女性が手前の席に座っていた。

(うぇー、カッコいい大人やん)

「山手さんね、どうぞ」

この女性もニコッと笑い座るよう促した。

喫茶の小さなテーブルに真向かいに座り、いよいよ面接。

「私はこのブリッジホテルの支配人、大橋茜です。」

「山手ひびきです。海陽高校から参りました。」

「海陽からわざわざすみませんね。1時間くらいかかったでしょう」

「いえ、電車は好きなので大丈夫です。」

「電車、好きなの?」

「はい…」

(おお、好印象を持ってもらうためうっかりウソついた!バレとるかな?)

「乗るのが好きなの?どんな電車が好きなの?」

「乗るの、好きです。?どんな電車?」

(ここを掘り下げるかー⁈なんなんこの人?)

「ほら、特急とか新幹線とか、在来線とか観光列車がいいとか、あるでしょう?」

「それはなんでも…」

「あ、そう。そうよね。へんな質問したわね。私、乗り物オタクなのよ。共通の趣味あるかなーと思って。」

「す、すみません。電車好きなんて言って。」

(絶対ウソバレた。本当は電車のなかで座れんくてずっとため息やったし)

それからは事務的な質問になった。給料のこと、勤務時間のこと、寮のこと。

(絶対あのこと言わないかん!アレが決め手なんだから!これで採用をキメる!)

「あの、私は給料とか仕事の内容とか、特にこだわりはありません。

去年、叔母とここに泊まった時にサービスに感動してここで働きたいと思ったのです。」

急にひびきの声が大きくなったので、支配人は驚きながら言った。

「サービスって?どんなことをしたのかしら」

「私が誕生日だって知ってたのか、夕食の時にバースデーケーキを持ってきてくださったんです!」

(キマった!どう?どう?)

「あれ?それって…」

少しの間があった。

「あなたにとっていい印象であったことは、私としてもうれしいことだわ。

わかりました。また、採用かどうかは学校に連絡するわね。」

そういって席を立った。

(あれ、思っていた反応と違うね〜。あれ?)

支配人は玄関まで送ってくれ、別れ際に言った。

「あなた、叔母様とこちらにきた時は初めてのホテルだったのかな?」

「そうです。ホテルというものに初めて泊まりました!」

(初めての感激感出したよ)

「そう、ありがとうございました。また機会があったら叔母様と来てくださいね。」

ひびきは深くお辞儀をして、駅に向かった。

なんだかモヤモヤした気持ちだった。

ひびきにとって始めての面接、始めての就活、用意していた言葉は伝えた…が何だか「不採用」の予感はしていた。

電車に乗ったらすぐ叔母にラインをした。

「栄子ちゃん、私は多分不採用です。(泣)」

 

つづくー!