あけの島、しおの宿 第2話~残念をだきしめて
海の景色はいいもんですなあ。
チープな旅に出かけました。
海を見ながら車の中で友人とハモる。これが意外に気持ちいいのだ。
この物語のタイトル決めました。「あけの島、しおの宿」
ドラマになることを想定してのタイトル決め。いいんじゃない?
さあ第2話をどうぞ。
ひびきの叔母深町栄子はひびきの母の妹。
父と母はひびきが幼いころから共働きなので 「いまだに独身(ひとり)」の叔母が
ひびきの面倒をみてきた。
35歳でスーパーの販売員。特に美人というわけでなく、
特にかっこいいというわけでなく、やっぱり惜しい。
趣味は食べ歩き、ワイドショーチェック、最近お花を習い始めたばかり。
彼氏無し。
「不採用?どして?心当たりある?」
栄子がラインの返信をした。
「また、泊まりに来てくださいって言われた。」
ひびきが返した。
「まあ帰ってから話すわ」
そこで、携帯を閉じ家に向かった。
ひびきの家は1丁目 栄子のアパートは2丁目だった。
ひびきはまっすぐ家に帰らず、栄子のアパートに向かった。
この日栄子は休みで家にいた。
恒例の録画したドラマを一気に見る日だった。
そろそろひびきが来る頃だと思ったのか、
区切りのいいところで止めてリモコンを置き、電気をつけた。
「はいはい、ダライラマー(ただいま)」
「おお、おかえり、お疲れさん」
栄子はひびきを迎えた。
「何見てたの?」
手を洗いながらテレビを見た。
「『夜を抱きしめて』の最終回」
「わお~、そうだったっけ?、ずっとみてないわ」
「ちゃんと録画してるよん」
「わ~い助かったあ。あとから見せて~ドロドロ?」
「まあ、かなりね。でも意外にあの男が真面目になるんだよね?」
「え~?あの3マタ男が?」
「そう、だんだんカッコよくなってくるんだよ~、って、
それはいいからさ、面接のこと」
「ですよね~。だからさ、もう二度と会いませんよ的な見送り方されたんだよ。」
「それはどうしてわかる?」
「あなた、ホテルに泊まったの初めて?って聞かれてさ、それって良くないの?
貧乏丸出しって感じなの?」
「そんなことないでしょ、私だって大人になるまでホテルなんか泊まったことなかったもん。貧乏でわるかったな?」
「このホテルのサービスが気に入ったって言ったんだよ。ここに泊まった時、
誕生日のケーキを出してもらったって。」
「え~~~~?それ言ったの?」
「なんかまずかった?私はそれが決定打だと思って言ったんだけど?」
栄子はしばらく困った顔をして言った。
「誕生日のケーキさ、あれ、私がお願いしたんだよね。姪が誕生日だからって。…ごめん。内緒にしておいたのが悪かったね。」
「うを~~~~~!そうだったんだ。…いやいや栄子ちゃんのせいじゃないんだから。私が勝手にそう思い込んで言ったことだから。」
「ホテルのチラシに、誕生日のサプライズケーキ承りますって書いてあって。。。。」
お互いの間に沈黙の時間が流れた。
(ひびき、ごめん。本当は最近いい感じだった酒屋のクラ君の誕生日をお祝いしようとホテルをとっていたんだけど、クラ君前日にドタキャンしやがって、暇そうなひびきを誘ったんだよね。たまたまクラ君とひびきが同じ誕生日で、チョコプレートの名前を急きょ変えてもらったんだよ。なんて、いえね~よ。いえるわけね~よ。)
「栄子ちゃん、ありがと。私のために。」
「いや、何と言っていいのか…」
ひびきはにこっと笑って
「また、就職活動がんばろ!まずはそのためにドラマを見てリセットだ、『夜を抱きしめて』8話目からみるよ~」
「8話からが激しいんだよ。あの男が車で追いかける途中に…」
「ノノノ 言うな言うな さあ見ますよ~」
電気を消して、お菓子とジュースを用意してドラマ鑑賞が始まった。
第3話につづく