第3話〜悲しい広告

暑い時はウナギ。

ご馳走になりました!美味しかった。

どんなに貧困に陥っていても、食べ物運はあるんですよね。

食べ物もらい運、食べ物ゴチ運、食べ物巡り運。ありがたい。

f:id:kodai2800:20170731003701j:image

では第3話どうぞ。

 

 

ひびきは学校にいた。
先生から不採用を聞かされた。
 
「やっぱりダメだったかー」
暗い顔をして教室に帰ると一番の仲良しの友人 小石ユリノが寄って来た。
 
「どうだった?」
「不採用だってさ、世の中は働き手がいないって言ってるのに こんなに意欲のある女の子をどうして不採用にするかなあ」
「そうだったか…ほんと、わかってないなあ。
ビッキーは顔も性格もイマイチだけど 意欲はあるもんね」
 「コレ、ユリノお口が過ぎますよ!」
「さーせん」
「今日、やけ食いしたいんだけど、どうすか?」
「マジか、今日はバイトがあるんだよねー」
「そうでした、すまんすまん。太るし、やっぱやめるわ」
「ごめんね」

学校からの帰り道、グランドでサッカーをしている友人をみつめるひびき。
「部活でもしてたら 採用されてたかもな」
ちょっと暗い顔で歩いて通り過ぎた。

ひびきは高校入学後、どうしてもバイトがしたくて部活には入らなかった。
ファミレスで2年ほどバイトをしたが、時給が上がらず店長にそのことを訴えるとギクシャクしてしまい やめてしまった。
しかし、レストランで働くことは嫌ではなかった。
就職するならサービス業だと決めていた。

帰りの電車の中で中吊りの広告が目に入った。
「美しい島とやさしい温泉で 自分のことを考えませんか?」
と、書いてある。
旅行会社のツアーの広告だった。
「自分のことをかんがえる?自分の事を考えない人っているんだろうか?」
そこには夕日が照らす海に どっしり構える大きな鳥居があった。
「超きれい」
ひびきは、本当は悲しかった。
あのホテルで働きたかったのだ。
自分がホテルでお客様と接している姿を何度も想像した。
制服を着て、客に丁寧に接し、颯爽と動く自分の姿を描いてはにやけていたのだ。
まわりが進路を決めていく中で、自分はホテルで働くと自慢げに語る姿も想像の中にあった。
広告を見ながら涙がこぼれた。

「私だってきれいな景色を見ながら温泉に入って、自分のことを考えたいんだよ」
電車は駅に到着した。
ひびきはさっさと電車を降りて駆け足で帰った。
泣いている姿を見られないように。


第4話につづく